紆余曲折を経て人生をともに積み重ねている思いが強まり、それなりに感慨深いものがあります。 『週イチ映画館主義』、『同 PARTⅡ』でおなじみ(?)吉野文雄教授のご紹介がきっかけでした。 (文中の横井が僕のこと。北星堂というのは当時勤めていた創業90年超の老舗出版社ですが、 のちに給与未払いで社長が雲隠れするなど、トラブル多発で大いにモメた因縁の相手です) ◇◇◇ あとがきにもあるように、この夏(2007年)、木村先生は自分で決めた執筆スケジュールをきっちり守り、 次から次へと手書き原稿を書き上げるものだから、僕もサポート役の奥様もてんわやんわの大騒ぎ。 「前田さんの顔に泥を塗るワケにはいかないから、一瞬たりとも気を抜けないなぁ」とボヤきつつも、 僕も若気の至りで、「舐められちゃいけない」と自分に気合いを入れ、先生の希望期日通りに無事刊行。 ◇◇◇ 僕の仕事ぶりをどう評価されたかはわかりませんでしたが、後日「次に出版したい企画があるんだが」 と連絡をいただいたときは、木村先生から「合格通知」をいただいたような気分になったものです。 「その後どうされてますか」とか「今年の賀状では貴兄のものが一番良かった」とか声をかけてくださることも。 ◇◇◇ 木村先生が「正論大賞」を受賞された際は、祝賀パーティ@ホテルニューオータニに招待いただき、僕もノコノコ。 産経新聞社主催だけあって、案の定ロクでもない連中がゴロゴロいるのには辟易しましたが、 当の木村先生は、お祝いに訪れたお孫さんや姪っ子の山村紅葉さんらに囲まれ、ご満悦の様子。 電話でしかお話したことのない美人と評判の奥様にも初めてお目にかかり、しばし歓談しましたが、 2017年のこのときが、木村先生にお目にかかった最後の機会となってしまいました(写真は当時の記事より勝手に転載)。 ◇◇◇ 付け加えると、世間的には保守系の論客というくくりになるのでしょうが、僕のなかではそのようなイメージは希薄で、 生涯現役の学者として、「北方領土問題が解決しないうちは引退できない」と力強く宣言されていたのが印象的でした。 ◇◇◇ 片や、相変わらず僕のことを気にかけてくださり、今年に入ってからは何度か電話でお話する機会も。 話の内容は、木村先生がご縁のある出版社に、僕のことを骨折ってまで外部編集者として紹介くださったり、 紹介先から新規案件の依頼があったとFAXで報告したら、うれしそうな声でわざわざ電話をいただいたり、 請け負った仕事が、先方の資料不足で思うように作業が進まない云々といったようなものだったのですが、 拙宅の固定電話の着信記録を見ると、最後のやりとりが先月4日。それだけに訃報が信じられませんでした。 これまでの30年弱の編集稼業を振り返っても、シンドイながらあのときほど充実した時間はなかったかと。 それだけに退社にまつわるドタバタのなか、裁判沙汰やら不眠症やらですっかり疲れ果ててしまい、 その後の10年間、どこか抜け殻のようにぼんやりしている僕のことを気遣ってくれたのかもしれません。 ◇◇◇ 木村先生は最後までパソコンを使えず、入力は奥様に頼りっきりだったので、僕とのやりとりは電話とFAXのみ。 「まだインクリボンが余っているのに、木村先生が亡くなっちゃうと誰もFAXしてこないから困ります」と言ったら、 空の上から味のある達筆でまた送ってきてくれるかも。そんなことを思いながら、これまでの御恩に心より献杯!
by nandakadays
| 2019-11-16 12:00
| NANDAKA
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