◆◆◆ 20日の夜遅くに、のほほーんとした気分で安曇野から戻り、 留守にしていた間に溜まった2日分のメールを受け取ると、 その中のひとつ、北の姐御からの文面に神妙な内容が…。 ◇◇◇ 震災直前の拙ブログ「旅する絵描き・展」の余談で触れた 小樽のHさんがくも膜下出血で倒れ、先月亡くなったという。 おそらく60歳前後だろう。 先月、不意に現れて拙宅に泊まっていったギタロー@小樽が 「Hさんの店、ここ最近閉めているけど、どうしたんだろう」 となにげなく呟いていたのは、こんな理由が原因だったのか。 ◇◇◇ 30歳で小樽に移住した僕にとっては、ひと回り以上歳の離れた 同業の先輩移住者というより、まさしく御意見番のような存在だった。 編集者としての知識も技量も経験もほとんどないクセに、 やることだけは向こう見ずで生意気盛りだった僕は、 何かにつけて相談に乗ってもらったり、時にはカラんだりしていたが、 Hさんにしてみれば、所詮僕などたしなめる程度の存在で、 不安なときに勇気づけてもらおうと、Hさんの営む喫茶店を訪れると、 淡々とした穏やかな口調ながら、逆に何度説教・叱咤されたことか。 そんなHさんのことを苦々しく思ったのも、一度や二度ではない。 それでも、僕が仕事場を探していることを知ると、 小路が入り組むアヤシイ飲み屋街のど真ん中にある 格安の穴場物件を見つけてきてくれたり(実際、そちらを借りた)、 僕のいない方向を眺めながら、「この前の記事、よかったよ」と、 北海道新聞に書いた小さなコラムを褒めてくれたこともあった。 ◇◇◇ Hさんのことを、誰かしら悼んだり偲んでいないかと検索したものの、 行きあたったのは、絵本作家・長谷川集平さんのブログくらい。 姐御情報によれば、葬儀らしい葬儀も執り行われなかったという。 いかにもHさんらしい。 ちなみに長谷川さんのブログには、こんな一節が書かれていた。 「5歳上のHさんに、ぼくはいい感情だけを持っているわけではなく、嫌なことも いっぱいあった。もっと話すべきだった。まだ時間はあると思っていた。――」 ◇◇◇ 今、改めて思い返してみると、小樽で過ごした8年あまり、 正確には移住前の20代最後の夏に、初めて店へ足を運んだときから、 驚くほど多くの言葉を、Hさんから受け取っていたことに気づかされた。 ずっと大事にしている言葉もあるが、すっかり忘れていた言葉までもが、 Hさんの死をきっかけに、とめどもなく湧きあがってくる。 その言葉を噛みしめながら、残された僕はもう少し生きていこうと思う。 ◇◇◇ 最後にお目にかかったのは2008年の春。 野暮用で札幌へ出向いたついでに、小樽へ足を延ばし、 念願の小さな居酒屋を始めていたHさんの店を独りで訪ねた。 意を決して暖簾をくぐると、狭い店内にはHさんの姿しかなかった。 数年ぶりにひょっこり姿を現した僕に対し、あえて驚くそぶりも見せず、 以前より少し肩の力が抜けたような表情で、静かに迎え入れてくれた。 僕は少しだけ顔を出したらお暇し、その夜は他の知り合いの店も 数軒ハシゴするつもりだったのに、気づけばずっと長居し、 途中やってきた他の客の姿が消えても、そのまま酔い続けていた。 僕も、まだ時間があると思っていた。
by nandakadays
| 2011-08-26 10:00
| DAYS
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Comments(4)
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まるどん
at 2011-08-29 13:23
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このブログを読んでHさんはニンマリしてるんじゃないかな。人の心に残る人って、Hさんみたいな人なんですね。
元気出してね。
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nandakadays at 2011-08-29 15:15
おひさしブリブリです。
考えてみると、今の自分のまわりには Hさんのような御意見番が一人もいないことに気づき 自分にとってかけがえのない存在であったことを 改めて痛感した次第です。 Hさんの思い出は尽きないけど、もう元気だよん。
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まるどん
at 2011-08-29 16:01
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お元気でなりより。(=^・^=)
温泉めぐりもずっと羨望のなまざしで追いかけてますのよ。ほほ。
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nandakadays at 2011-08-29 18:11
オヤオヤお恥ずかしい限り…。
そういえば今年はまだボヨヨンを拝んでいないなぁ。
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